話題の退職引き留めサービス「イテクレヤ」をご存知でしょうか。
近年、退職代行サービスの普及により、多くの企業が社員の突然の離職に頭を悩ませています。東京商工リサーチの2025年調査では、2024年以降に退職代行による離職を経験した企業は7.2%、特に大企業では15.7%にも上ることが明らかになりました。
そんな中、2025年8月に正式リリースされた「イテクレヤ」は、従来の無理な引き留めとは一線を画す、組織の根本的な課題解決にフォーカスした画期的なサービスとして注目を集めています。
本記事では、イテクレヤの仕組みから料金体系、実際の導入効果まで、最新情報を詳しく解説します。離職の連鎖に悩む経営者・人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
イテクレヤとは？話題の退職引き留めサービスの基本情報
イテクレヤは、2025年8月1日に正式リリースされた退職引き留めサービスです。運営会社は東京・新宿に本社を構える株式会社おくりバント（2014年設立）で、アドウェイズグループの一員として広告企画事業を展開していました。
サービス名の由来について サービス名の由来は公式に記載されていません。関西弁表現を想起させるネーミングとしてSNSで話題となっており、特に楽曲の歌詞「一生一緒に”いてくれや”」との連想で注目を集めています。
「引き留め」ではなく「課題解決」 公式には「退職希望者を無理に引き止めるものではない」と明言されており、あくまで組織課題の発見と改善支援にフォーカスしたポジティブな退職対策サービスとして位置づけられています。
サービス開発の背景 退職代行サービスの普及により、社員の突然の離職が増加する中で、表面的な退職理由だけでは組織の根本課題に対処できないという問題に着目。匿名ヒアリングを通じて退職に至る本当の原因を掘り下げ、改善策を提示することで職場環境の改善と離職防止を支援する点が特徴です。
主な対象企業は「退職者が相次ぐ企業」全般で、業種・規模を問わず導入が想定されています。正式リリース前には、IT系中小企業の株式会社JAMが先行導入し、成果を上げた事例として紹介されています。
イテクレヤの仕組み｜6段階のサービス提供フロー
イテクレヤのサービス提供は、以下の6段階のフローで進行します。
第1段階：経営層ヒアリング まず経営者や人事責任者との初回ヒアリングで、現在の組織状況や離職の傾向、想定される退職理由などを聞き取り、課題認識の棚卸しを行います。
第2段階：社員匿名ヒアリング 退職意向者を含む複数の社員に対し、匿名でインタビューを実施します。職場環境・人間関係・業務内容への不満や不安、過去に退職したいと感じたシチュエーションなどを丁寧にヒアリングし、匿名性を担保することで社員の率直な本音を引き出します。
第3段階：経営層へのフィードバック 収集した社員の声は整理され、プライバシーに配慮した形で経営層へフィードバックされます。見過ごされがちな課題や潜在的な離職要因が共有され、報告内容には課題の重要度や緊急度の評価も含まれます。
第4段階：改善策の提案 ヒアリング結果をもとに、退職要因を解消するための制度設計・仕組みづくりの改善案が提示されます。必要に応じて、社員の声を継続的に拾い上げる匿名相談窓口「イテクレヤ・ホットライン」の設置支援も提案されます。
第5段階：改善策の実施支援 提示された改善策を実行する場合は、運用設計（定期的なフォローや効果測定の仕組みづくりを含む）まで支援が提供され、改善策が形骸化しないようフォローします。
第6段階：社員へのフィードバック 最後に、経営者から社員へヒアリング内容への理解と感謝、必要に応じた謝意を伝えた上で、提案した改善策を説明するフィードバックの場が設けられます。この場にはイテクレヤ担当者も同席し、双方にとって前向きな対話をサポートします。
「イテクレヤ・ホットライン」の実例 先行導入企業のJAMでは、匿名メールフォーム形式のホットラインが福利厚生として導入されました。社員・経営陣双方が個人を特定されることなく、継続的に課題を共有できる仕組みとして運用されています。
以上の流れを通じて、一度きりの対症療法に留まらず、継続的な組織改善につなげる仕組みとなっています。
料金体系・導入プロセス｜個別見積もりで柔軌対応
料金体系 イテクレヤの料金は個別見積もり制となっており、公式サイトや公開資料に明確な料金表は記載されていません。アウトプット（成果物）の内容や媒体に応じて予算が変動するため、導入企業ごとに個別相談の上で料金を決定する方針です。
運営会社のおくりバント全体の価格スタンスとして「常に地域最安値を目指しており、目を背けたくなるような価格は提示しない」と公式サイトに明記されており、予算に限りがある企業でも相談しやすい姿勢を打ち出しています。ただし、これは会社全体の方針であり、イテクレヤ個別の料金保証として明文化されているわけではない点にご注意ください。
料金は個別見積りで、最低利用期間の有無は公式未記載。契約条件については要相談となります。
導入プロセス 導入の流れは以下の通りです：
- 問い合わせ・初回面談：経営者との初回面談で組織の現状や離職の背景を共有し、課題や導入目的の認識をすり合わせます
- 事前準備：過去の離職傾向や既存の人事制度に関する情報など必要資料を準備・提供します
- 社員への周知：匿名で第三者ヒアリングを実施する旨を社内周知し、協力を得ます
- サービス開始：社員への匿名インタビュー日程を調整し、6段階のフローを開始します
先行事例の株式会社JAMでは、問い合わせから約1週間後に初回面談が実現しており、比較的スピーディーな対応が可能と考えられます。初回面談までのリードタイムはケースにより数日程度、全体は数週間から数か月程度と見込まれますが、公式の標準期間は未提示となっています。
導入効果｜先行事例から見る定性・定量的メリット
定量的効果 正式提供初期のため、離職率改善などの定量成果は公開されておらず、個別事例ベースの報告が中心となっています。提供側も「確実に離職を止める保証はない」と述べていますが、潜在的問題を可視化し優先度付きの改善策を提示することで、離職連鎖を抑制できる可能性が高まるとしています。
定性的効果 先行導入企業の株式会社JAMでは、以下のような定性的な効果が報告されています：
- 制度面の改善：不明瞭だった昇給ルールが明確化された
- コミュニケーション改善：経営陣と社員の対話が促進された
- 信頼関係の構築：社員から「私たちの声を真摯に受け止めてくれた」「具体的な改善策を講じてくれてしっかり向き合ってくれた」との声が寄せられた
- 組織風土の変化：「今後は齟齬が生まれないようコミュニケーションを意識していきたい」など、社員の前向きな意識変化が見られた
経営者側も「自分の未熟な点と向き合う契機となった」「自社の課題に真摯に向き合うきっかけになった」と感謝の声を上げており、離職問題を組織改革のチャンスに転じた成功事例として注目されています。
興味深いのは、社員が当初「”イテクレヤ”などと名乗っているのでふざけたサービスかと思いきや、意外にも真面目に対応してくれて驚いた」という反応を示した点です。ユニークなサービス名にも関わらず、真摯な対応により信頼を獲得できた事例と言えるでしょう。
どんな企業に向いている？対象業界・規模の特徴
イテクレヤは特定の業界や企業規模を限定していませんが、公式リリースでは「退職者が相次ぐ企業へ。離職の連鎖を止める」として、以下のような企業で効果が期待できるとしています：
主な対象企業
- 退職者が相次ぎ、離職の連鎖に直面している企業
- 突然の離職増加に悩む経営者・人事担当者がいる組織
- 退職代行による離職を経験した企業
効果が期待できる業界（推測） 公式の業界特定はありませんが、人手不足・高離職率が構造的な業界（介護・外食・小売等）や、変化の激しいベンチャー・IT企業で相性が良い可能性があります。特に従業員の定着が事業継続の鍵となる中小企業での活用が想定されます。
実際の先行導入事例である株式会社JAMはIT系の中小企業で、退職者が続出したことが導入のきっかけでした。現在公表されている導入事例は限定的ですが、従業員数規模に応じて柔軟に対応できる体制を取っていると考えられます。
注意点とリスク管理｜プライバシー保護と運用のポイント
プライバシー保護の取り組み イテクレヤでは以下の点でプライバシー保護に配慮しています：
- 匿名ヒアリング：社員へのヒアリングは匿名で実施し、個人が特定されない形で経営層にフィードバック
- 守秘義務の徹底：社内のセンシティブな課題を扱うため、運営側では守秘義務を徹底
- 公開範囲の調整：ヒアリング内容のアウトプットについて、社外公開の可否を事前に企業側と調整可能
- 心理的安全性の確保：イテクレヤ担当者が社員ヒアリングや最終フィードバックの場に同席してフォロー
先行導入企業のJAMでは、匿名メールフォーム形式でのホットライン運用により、社員・経営陣双方が個人を特定されることなく課題を共有できる仕組みが実現されています。
運用上の注意点 実効性は経営の本気度と施策実行に依存し、単発導入での即効性は保証されません。サービスの効果を最大化するために、以下の点に注意が必要です：
- 経営陣の本気度：提案された改善策を真摯に受け止め実行し、組織改革に本気で取り組むことが前提
- 社員の協力：匿名とはいえ、社員が本音を十分に話さなければ真因を特定できない
- 継続的なフォロー：単発の介入で終わらせず、改善策の進捗を定期的にフォローすることが重要
- 他の人事施策との連携：従業員エンゲージメント調査やEAPなどとの併用で、より総合的な人材定着策として効果を高める
提供側も「確実に離職を止める保証はない」と述べており、改善策が実行されなかった場合や経営層の意識変革が伴わない場合は効果が出にくいと考えられます。
退職代行時代の新ソリューション｜市場背景と将来性
市場背景 「退職引き留めサービス」というカテゴリ自体が新しく、明確な市場規模データは存在しません。しかし背景には、退職代行サービスの利用拡大があります。
東京商工リサーチの2025年調査によれば、2024年以降に退職代行による離職を経験した企業は7.2%、従業員1000人以上の大企業では15.7%に達しており、社員の突然の退職が広がる中で、離職を防ぐサービスへのニーズが高まっています。
FNNプライムオンラインでも「引き留め」サービスの新潮流として紹介されるなど、メディアからも注目を集めています。
競合・市場性 従来、従業員サーベイやエンゲージメント改善コンサルティングなどの隣接領域は多数存在しましたが、退職の局面に特化して企業と社員の間に立ち根本原因を洗い出すサービスは希少です。イテクレヤは業界でも珍しい先駆的な取り組みと言えるでしょう。
将来性 少子化による人手不足や若年層の早期離職傾向が続く社会情勢を踏まえると、人材流出を防ぐソリューションとしての将来性は大きいとみられます。サービス効果が実証され導入企業が増えれば、同様の退職防止コンサルティングが他社から登場する可能性もあります。
2025年現在、「イテクレヤ」は知名度と実績面で先行しており、この新分野におけるリーディングカンパニー的存在と言えるでしょう。
まとめ｜イテクレヤ導入前に確認すべき3つのポイント
イテクレヤは退職代行時代の新しいソリューションとして注目を集めている革新的なサービスです。導入を検討する際は、以下の3つのポイントを確認することが重要です。
1. 組織改革への本気度 単なる引き留めではなく、組織の根本的な課題解決に取り組む意志があるかが成功の鍵となります。経営陣が提案された改善策を実行し、継続的にフォローする体制を整えることが不可欠です。
2. 社員との信頼関係 匿名ヒアリングで社員の本音を引き出すには、プライバシー保護と心理的安全性の確保が前提となります。社員が安心して率直な意見を述べられる環境づくりが重要です。
3. 投資対効果の見極め 個別見積もり制のため、具体的な料金や期待効果を事前にしっかりと検討する必要があります。短期的な離職防止だけでなく、中長期的な組織風土改善や人材定着への投資として捉えることが大切です。
イテクレヤは従来にない画期的なアプローチで退職問題に取り組むサービスですが、効果を最大化するには導入企業側の真摯な取り組みが不可欠です。離職の連鎖に悩む企業にとって、組織改革のきっかけとなる有力な選択肢の一つと言えるでしょう。
注記： 本記事は2025年9月11日時点の公開情報に基づきます。料金や契約条件、効果測定の数値は個別見積・個別事情により変動する可能性が高いため、最新情報は公式にご確認ください。
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