YouTubeやショート動画に夢中になり、一日中スマートフォンを手放せなくなっている高齢の親を指す「ドパ親(どぱおや)」という言葉が注目を集めています。
子どもの動画依存を指すネットスラング「ドパガキ」から派生した言葉で、実家の親の動画視聴や生活習慣に不安を覚える家族の間で共感が広がっています。
この記事では、ドパ親の意味や言葉の由来、ドパガキとの具体的な違いを整理したうえで、高齢者が動画に深くのめり込んでしまう心理的・環境的な背景について分かりやすく解説します。
ドパ親とは?意味や言葉の由来を解説
「ドパ親」とは、YouTubeやSNSなどの動画コンテンツを長時間見続け、日常生活に支障が出ている高齢の親を指す俗称です。
単に動画を楽しんでいる状態ではなく、食事や家事、家族との会話などの日常生活がおろそかになるほど没頭している様子を、心配や皮肉を込めて表現する際に用いられます。医学的な病名や診断名ではなく、インターネットやSNSを中心に広まった表現です。
「ドパガキ」から派生した言葉の成り立ち
言葉のルーツは、若者や子どものスマホ依存を表すネットスラング「ドパガキ」にあります。
- 語源の由来:脳内の神経伝達物質である「ドーパミン」から取られています。
- ドーパミンの働き:楽しい体験や意欲、達成感などを感じた際に分泌される物質です。動画を見て「面白い」と感じると、脳が刺激を求めて次の動画を次々と再生したくなります。
- ドパ親への広がり:強い刺激を次々に求める若者(ドパガキ)と同じように、高齢者も動画の刺激から抜け出せなくなっている現状から「ドパ親」と呼ばれるようになりました。
メディア報道による注目の高まり
2026年11月1日にABEMA TIMES(Yahoo!ニュース配信)が高齢者のYouTube依存を特集したことで、世間一般でも大きく知られるきっかけとなりました。
報道では、83歳の女性が1日数時間以上YouTubeに没頭し、特定の思想やスピリチュアル関連の動画に強く傾倒してしまった事例などが紹介され、身近な問題として議論を呼んでいます。
ドパ親とドパガキの違いは?共通点と周囲への影響
「ドパ親」と「ドパガキ」はどちらも過度な刺激を求め続ける状態を指しますが、最も大きな違いは「対象となる年齢層」と「周囲が介入できる難しさ」にあります。
両者の違いをわかりやすく整理しました。
- 対象となる年齢層
- ドパガキ:子ども・若年層
- ドパ親:高齢の親世代
- 利用の中心となるコンテンツ
- ドパガキ:テンポの速いショート動画、オンラインゲーム、SNS
- ドパ親:YouTubeの長尺・関連動画、SNS、ネット配信
- 引き起こされやすい問題
- ドパガキ:学力や集中力の低下、睡眠不足などの生活習慣の乱れ
- ドパ親:極端な情報の鵜呑み、高額商品の購入や過度な課金、認知機能の低下リスク
- 周囲(家族)の対応の難しさ
- ドパガキ:保護者が利用時間の制限や別の遊びを促すなどの管理が比較的しやすい
- ドパ親:親本人のプライドや自立性があるため、子ども世代が一方的にスマホを取り上げたり制限したりすることが難しい
刺激を求める仕組みは全世代で共通
どちらも「動画から得られる刺激を繰り返し求めてしまう」という脳の反応は共通しています。
ただし、ドパ親の場合は健康情報やニュースにとどまらず、占い、スピリチュアル、陰謀論、不確かな投資情報といった刺激や不安を煽るジャンルに深く傾倒しやすい点に注意が必要です。真偽を確かめないまま過度に信用してしまったり、高額な課金や購入トラブルに発展したりする懸念があります。
また、子ども世代が強く注意すると「指図されたくない」と反発を招き、親子関係が悪化しやすい点もドパ親問題の根深い部分です。
高齢者が動画にハマる3つの背景と理由
高齢者が動画に過度に依存してしまう背景には、単なる娯楽としての面白さだけでなく、加齢に伴う環境の変化や孤独感が強く関わっています。
専門家の見解をもとに、主な要因を3点にまとめました。
孤独感や社会からの孤立への不安
精神科医の吉竹弘行院長によると、高齢者がネット動画にのめり込む大きな動機の一つが「孤独や不安」です。
退職や生活環境の変化、友人と会う機会の減少によって、社会的なつながりが希薄になりやすいのが高齢期の特徴です。特に一人暮らしの場合、誰とも会話しない日が続くことも珍しくありません。
動画を再生している間は人の声が部屋に響き、寂しさを紛らわせることができます。配信者の語りかけを聞くことで「人とつながっている」という疑似的な安心感を得やすくなり、結果として視聴時間が長時間化しやすくなります。
デジタル機器に不慣れでアルゴリズムの刺激を受けやすい
高齢者はデジタル機器の仕組みに詳しくないことが多く、動画サイトの推薦機能(レコメンド機能)の刺激を無防備に受けやすい傾向があります。
YouTubeなどの動画サービスは、1つ動画を見終えると好みに合わせた関連動画が自動的に次々と表示されます。最初は日常的な健康法を調べていただけでも、気づけば刺激の強いスピリチュアルや過激な論調の動画へ誘導され、夢中になって抜け出せなくなるケースが見られます。
一人で端末を見る「1対1の没入感」
社会学者の藤田結子氏は、スマートフォンやタブレットを一人で操作することによる「1対1の強い没入感」を指摘しています。
リビングのテレビを家族で見る際は、他人の目を気にしたりチャンネルを譲り合ったりする配慮が働きます。しかし、個人のスマホ画面を一人で見つめる環境では、誰にも気兼ねせず自分の好きな世界に完全に没入できてしまいます。この自由度の高さが、視聴をやめられなくなる要因となっています。
動画依存によるリスクと家族が取れる対策
長時間の動画視聴は、単なる時間の浪費にとどまらず、心身の健康や金銭トラブルにつながるリスクをはらんでいます。
主なリスク
- 金銭的な負担:過度な投げ銭(ギフティング)や課金、怪しい高額セミナー・商品の購入
- 人間関係の摩擦:極端な思想や誤情報を信じ込み、家族や周囲との会話が噛み合わなくなる
- 心身への影響:吉竹院長が指摘するように、過度な依存によって集中力や判断力が鈍り、認知症や老人性うつに似た症状が生じるリスク
長時間の視聴が直ちに認知症の原因になるわけではありませんが、運動量や対面コミュニケーションの減少は心身に悪影響を及ぼします。
家族としての向き合い方
親の動画視聴が気になった場合でも、頭ごなしに端末を取り上げたり叱責したりするのは逆効果になりがちです。
- 本人の気持ちに耳を傾ける:否定から入らず、普段どんな動画を見ているのか関心を持って聞いてみる
- 代替となる楽しみを増やす:外出の機会を提案したり、趣味や散歩を一緒に楽しんだりする
- 対話の頻度を増やす:日常的な電話や会話を増やし、現実世界でのつながりや安心感を実感してもらう
まとめ
- ドパ親とは、長時間の動画視聴によって日常生活がおろそかになっている高齢の親を指す俗称
- 若者のスマホ依存を表す「ドパガキ」と同じく、脳内のドーパミン刺激を求める行動が由来
- 背景には、退職や一人暮らしによる孤独感、デジタルの推薦機能による誘導、一人で画面を見る没入感がある
- 対策としては頭ごなしな禁止を避け、孤立感を和らげる対話や別の楽しみを増やす関わり方が重要
スマートフォンは高齢者にとっても便利な道具ですが、孤立感を埋める唯一の手段になってしまうと依存のリスクが高まります。家族や周囲がコミュニケーションを大切にし、適切な距離感で見守っていくことが求められます。


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