寒川賢治(かんがわ けんじ)さんは、「空腹ホルモン」として広く知られるグレリンをはじめ、数々の重要な生理活性ペプチドを発見した世界的な生化学者・内分泌学者です。
高校のサッカー部監督を目指していた青年期から一転、大学での出会いをきっかけに研究の道へ進み、約45年にわたり未知のペプチド探索をけん引してきました。2025年にはノーベル賞の有力候補とされる「クラリベイト引用栄誉賞」に選出されるなど、今なお高い注目を集めています。
この記事では、寒川賢治さんのこれまでの学歴や経歴、代表的な研究成果、これまでの受賞歴、そして名誉研究所長としての現在の活動までをわかりやすく整理してお伝えします。
寒川賢治の学歴と経歴|サッカー少年から世界的生化学者へ
寒川賢治さんは徳島県で生まれ育ち、指導教員や共同研究者との出会いを機に、ペプチド研究の第一人者へと歩みを進めました。
幼少期から学生時代、そして研究機関のトップに至るまでの学歴・経歴は次のとおりです。
- 徳島で過ごした学生時代
1948年8月22日、徳島県板野郡板野町生まれ。板野町立板野南小学校、徳島市徳島中学校を経て、1967年に徳島県立城南高等学校を卒業しました。 - 教師志望から研究の道へ
高校・大学とサッカー部に打ち込み、当初は「高校のサッカー部監督として全国大会へ行く」という夢を抱いて高校教員を目指していました。しかし、大学で有機合成などの研究に触れるうちに、研究そのものの魅力に引き込まれていきます。 - 大学・大学院での学び
1971年に愛媛大学文理学部理学科を卒業後、1973年に同大学大学院農学研究科修士課程を修了。その後、指導教員の勧めを受けて大阪大学大学院理学研究科博士課程へ進学し、1976年に理学博士号を取得しました。大阪大学時代にペプチド研究の重鎮・松尾壽之さんと出会ったことが、その後の研究人生の大きな転機となります。 - 研究機関での要職歴任
1977年に宮崎医科大学医学部助手に就任し、1990年に同助教授へ昇進。1993年からは国立循環器病センター研究所の生化学部長を務め、1996年には京都大学大学院医学研究科教授も併任しました。その後、2007年に国立循環器病センター研究所長、2010年には独立行政法人国立循環器病研究センター理事・研究所長に就任し、長年にわたり国内の生命科学研究をけん引しました。
寒川賢治の研究内容と主な功績|約30種類の新規ペプチドを発見
寒川賢治さんの最大の功績は、独自の手法を確立して未知の生理活性ペプチドを次々と特定し、病気の治療や生命現象の解明に大きく貢献した点にあります。
生理活性ペプチドとは、血圧や代謝など生体内で重要な働きを担う小さなタンパク質のことです。寒川さんは約45年間の研究生活で、およそ30種類もの新規生理活性ペプチドを発見・構造決定しました。
- 画期的なペプチド精製技術の確立
研究初期、組織を凍結保存すると解凍時に分解酵素が目的ペプチドを壊してしまう問題に直面しました。そこで「組織を新鮮なうちに熱湯で煮沸して酵素を失活させる」という独自の抽出法を確立。この工夫が、その後の相次ぐ大発見の基盤となりました。 - 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の構造解明
1984年に心臓から分泌されるANPの構造を明らかにしました。血圧や体液量の調節に関わる物質で、BNPやCNPの研究とともに、心不全の診断や治療薬の応用へとつながる重要な成果となりました。 - アドレノメデュリンの発見(1993年)
褐色細胞腫から単離されたペプチドで、強力な血管拡張作用を持つことが解明されています。 - グレリンの発見(1999年)
胃から分泌される28個のアミノ酸からなるペプチドホルモンを発見しました。成長ホルモンの分泌促進だけでなく、食欲増進やエネルギー代謝の調整を担うことが判明し、一般には「空腹ホルモン」として世界的に広く知られています。肥満や生活習慣病のメカニズム解明に極めて大きな影響を与えました。
寒川賢治の受賞歴と現在の活動
寒川賢治さんは、国内外の権威ある賞を数多く受賞しており、2025年にはノーベル賞の登竜門とされる「クラリベイト引用栄誉賞」に選出されました。現在は名誉研究所長として学術界を支えています。
主な受賞歴
これまでに受けた主な表彰歴は以下のとおりです。
- 1985年:日本生化学会奨励賞、日本内分泌学会川上賞
- 2005年:武田医学賞
- 2006年:上原賞
- 2008年:日本学士院賞
- 2009年:慶應医学賞
- 2016年:日本肥満学会賞
- 2025年:クラリベイト引用栄誉賞(生理学・医学分野)
2025年のクラリベイト引用栄誉賞は、共同研究者の児島将康さんらとともに成し遂げた「グレリンの発見」が高く評価されたものです。論文の引用実績に基づき選考されるため、将来のノーベル賞候補としても大きな話題を呼びました。受賞に際して寒川さんは、「研究は1人ではできず、皆で取った賞」と語り、チームや周囲への深い感謝を述べています。
現在の活動状況
研究所長や理事などの重責を務め上げた後は、国立循環器病研究センターの名誉研究所長などの立場で活動を続けています。
第一線を退いた後も、学術論文の発表や学会活動などを通じて研究分野との関わりを維持しており、自らの歩みを振り返りながら「未知の物質を探し続ける探求心」を後進へ伝え続けています。
まとめ
寒川賢治さんは、サッカー少年から研究の道へ進み、独自の抽出技術によってグレリンやANPなど約30種類もの新規ペプチドを明らかにしてきた生化学界のパイオニアです。
2025年のクラリベイト引用栄誉賞選出をはじめ、その功績は世界的にも極めて高く評価されています。名誉研究所長となった現在も、日本の医学・生化学の発展に大きな足跡を残し続ける研究者の一人です。


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