「四国旅行に行きたいけれど、熊が出ると聞いて不安…」
「剣山に登る予定だけど、どんな対策が必要?」
四国は海に囲まれた島ですが、実はツキノワグマが生息しています。近年は全国的な熊のニュースも多く、四国の山へ入る際のリスクが気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、環境省や各県、四国森林管理局の2025年最新データに基づき、四国の熊の生息エリアと具体的な出没事情を徹底解説します。
この記事でわかること
- 四国の熊は「剣山山系」周辺に集中している
- 愛媛・香川の観光地では、現状ほぼ心配ない
- 2025年に確認された「道路・集落」への出没事例と対策
正しく恐れ、適切に備えることで、四国の素晴らしい自然を安全に楽しみましょう。
四国に熊はいる?結論と旅行・登山時のポイント
まず、一番気になるところから結論を申し上げます。
📌 四国にもツキノワグマは「います」。
ただし、その生息域は徳島・高知の県境「剣山山系」のごく一部に限られています。
北海道や本州の東北・北陸地方のように「どこにでも出る」わけではありませんが、特定のエリアでは確実な警戒が必要です。
【2025年時点の結論】剣山山系に「いる」が、個体数は極めて少ない
四国のツキノワグマは、日本全国でもトップクラスに小さい「孤立した個体群」です。
環境省や研究機関の調査によると、四国全体の推定個体数は「おおむね二十数頭規模」とみられています。2024年度の最新調査(はしっこプロジェクト)では、センサーカメラによる個体識別で「少なくとも26頭」が確認されました。
つまり、「確実に26頭以上は生息しているが、それでも絶滅が危惧されるほど少ない」というのが現実です。
| 県名 | 生息状況(2025年時点) |
|---|---|
| 徳島県 | 生息中心地(剣山・那賀町・三好市など) |
| 高知県 | 生息エリア(香美市・安芸市の国有林など) |
| 愛媛県 | 近年の確実な生息記録なし |
| 香川県 | 公式な生息記録なし |
なぜ四国のクマは「絶滅寸前レベル」と言われるのか
四国のツキノワグマは、環境省レッドリストで「絶滅のおそれのある地域個体群(LP)」に指定されています。これは、いつ絶滅してもおかしくない、極めて危険な状態であることを示しています。
かつては四国全域にいましたが、以下の要因で激減しました。
- 過去の報奨金付き駆除
- 森林開発や林道整備による生息地の分断
現在は、剣山・三嶺・石立山などの険しい山岳地帯に追いやられ、遺伝的な多様性も低下しています。病気や災害で一気に絶滅するリスクと隣り合わせの、ギリギリの状態で生きているのです。
観光・登山で押さえておくべき3つの鉄則
これから四国を訪れる方が、まず押さえておくべきポイントは以下の3点です。
✅ 旅行・登山前のチェックポイント
- 一般観光地は心配無用
道後温泉、金刀比羅宮、高知市街などの観光地で熊を意識する必要はありません。 - 「剣山山系」に入るなら対策必須
剣山登山、スーパー林道、大釜の滝周辺へ行く場合は、熊鈴や食料管理などの対策を行ってください。 - 目撃時は行政へ連絡
緊急時は110番・119番。目撃情報は市町村役場へ通報することで、地域の安全と熊の保護につながります。
「必要以上に怖がらず、該当エリアでは油断しない」。このメリハリこそが、四国旅行を安全に楽しむための鍵となります。
【県別・エリア別】四国4県のツキノワグマ生息状況
四国のツキノワグマは、県によって生息状況がまったく異なります。「四国」とひとくくりにせず、自分の行く県やエリアの事情を把握することが重要です。
徳島県・高知県:剣山山系・スーパー林道周辺が中心
現在、四国のツキノワグマの生活圏となっているのは、主に徳島県と高知県の県境エリアです。
特に以下の山域は「熊のテリトリー」であると考えて間違いありません。
- 剣山(つるぎさん)周辺
- 三嶺(みうね)〜石立山
- 剣山スーパー林道沿い(那賀町・上勝町〜木沢エリア)
- 香美市・安芸市の奥深い国有林
徳島県は「徳島県ツキノワグマ対応指針」を策定しており、保護と事故防止の両立を目指しています。高知県側でも、三嶺の登山道沿いや香美市の国有林で樹皮剥ぎの痕跡や目撃情報が継続的に報告されています。
愛媛県・香川県:近年確実な生息情報は「なし」
一方で、西側の愛媛県と北側の香川県では状況が異なります。
💡 愛媛・香川の現状
- 愛媛県:1972年(昭和47年)に旧中山町で捕獲されて以降、50年以上確実な生息記録はありません。
- 香川県:公式記録としてツキノワグマの生息は確認されておらず、県も「生息していない」との見解を示しています。
したがって、道後温泉や松山城、讃岐うどん巡りといった一般的な観光で熊を恐れる必要は、現状ほぼありません。ただし、四国山地はつながっているため、県境付近の深い山に入る際は「念のため」の意識を持つのが賢明です。
「はしっこプロジェクト」で見えた実態:最低26頭・親子も確認
四国の熊を調査する「はしっこプロジェクト2024」の結果は、非常に興味深いものでした。
- 調査地点34か所のうち19か所で熊を確認
- 個体識別により「最低26頭」がいると判明
- 親子グマが4組確認され、繁殖活動も続いている
「絶滅寸前」と言われながらも、四国の熊たちは剣山山系という「最後の砦」で、懸命に命をつないでいます。
2024〜2025年の出没事例から見る「警戒すべき場所」
では、具体的にどこで目撃されているのでしょうか? 2024年から2025年にかけての傾向を見ると、熊の動きに少し変化が見られます。
2025年の特徴:山奥だけでなく「道路」「集落」への出現も
これまでは「人がめったに行かない山奥」での痕跡発見が主でしたが、2025年は「観光道路」や「集落」での目撃が相次ぎ、注目を集めました。
⚠️ ここが変わった!2025年の傾向
山岳地帯だけでなく、車が行き交う国道や、人が住む集落近くまで降りてくるケースが確認されています。
【事例1】大釜の滝周辺での親子グマ目撃(国道193号)
2025年7月、那賀町の人気観光スポット「大釜の滝」の上流部、国道193号(釜ヶ谷橋付近)で、親子とみられるツキノワグマ3頭が道路を横切る姿が目撃されました。
ここはドライブやツーリングで通る人も多いルートです。「観光地だから大丈夫」と思い込まず、以下の点に注意してください。
- 車から降りて写真撮影に夢中にならない
- ゴミや食べ残しを絶対にポイ捨てしない
【事例2】那賀町集落への出没と「柿の木」の教訓
同年11月には、那賀町木沢の小畠集落内で、夜間から早朝にかけてクマの出没が確認されました。原因は「空き家の敷地にある放置された柿」でした。
この事例では、行政が柿の実を撤去し、樹木に対策を施したことでクマは山へ戻っていきました。これは「エサさえなければ、クマは人里に執着しない」という重要な教訓を示しています。
登山・ドライブで特に注意したい「スーパー林道」周辺
日本最長のダートとして知られる「剣山スーパー林道」周辺でも、2024年から目撃が頻発しています。
- 4月:那賀町木頭中谷でスギの樹皮剥ぎ確認
- 7月:上勝町エリアで調査員が目撃
- 10月:美馬市木屋平エリアでライダー等が目撃
ツーリングやドライブで訪れる際は、休憩中に車外へ食べ物を放置しないよう、細心の注意を払ってください。
四国の山で熊と遭遇しないための装備と対策
四国の自然は素晴らしいですが、そこは彼らの家でもあります。お互いに不幸な遭遇を避けるために、エリアや目的に応じた対策を行いましょう。
【本格登山】剣山・三嶺へ行くなら「熊鈴」等は必須
剣山、三嶺、石立山などの生息域ど真ん中に入る場合は、「熊がいる前提」の装備が必要です。
🎒 推奨装備リスト
- 熊鈴・ラジオ:人の存在を遠くから知らせる基本アイテム。
- ホイッスル:緊急時に自分の位置を知らせるために有効。
- クマスプレー:万が一の遭遇時に身を守る最後の手段(ソロ登山者は携行推奨)。
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また、行動パターンも見直しましょう。クマが活発になる早朝・夕方の薄暗い時間帯の行動は避け、できるだけ複数人で会話をしながら歩くことが最大の防御になります。
【観光・キャンプ】車外での行動と「ゴミ管理」が命
スーパー林道でのキャンプや、大釜の滝周辺へのドライブでは、「ニオイ」の管理がすべてです。
キャンプ場や休憩スポットでやってはいけないNG行動がこちらです。
- 生ゴミや食べ残しを放置して寝る
- クーラーボックスをテントの外に出しっぱなしにする
- お菓子の袋や空き缶を車外にポイ捨てする
那賀町の事例にもある通り、人間の食べ物の味を覚えたクマは、やがて人里へ降りてくるようになります。「ゴミを持ち帰る」ことは、マナーであると同時に、自分とクマの命を守る安全対策なのです。
【ファミリー・初心者】安全に楽しむためのエリア選び
「子供連れで不安…」という方は、まずはリスクの低いエリアから楽しむのがおすすめです。
- ロープウェイ利用の観光登山:人が多く、管理が行き届いているエリアを選ぶ。
- ガイド付きツアー:地元の自然を知り尽くしたプロと同行する。
- 里山のハイキング:生息域から離れた、標高の低いコースを選ぶ。
無理に奥山へ入らずとも、四国には安全に自然を楽しめるスポットがたくさんあります。
もし目撃・遭遇したら?通報先と共存への取り組み
どれだけ気をつけていても、遭遇のリスクはゼロではありません。いざという時の連絡先と対応フローを頭に入れておきましょう。
危険レベル別の連絡先(役場 vs 110番)
状況に応じて、連絡先を使い分けることが重要です。
🚨 緊急事態(人身被害・威嚇されている)
迷わず 110番(警察) または 119番(消防) へ!
自分たちで対処しようとせず、車や建物内へ避難することを最優先してください。
📞 目撃・痕跡発見(危険はない場合)
市町村役場 または 県の鳥獣対策窓口 へ。
(例:那賀町役場、香美市役場など)
「いつ・どこで・どんなクマ(大きさ・数)を見たか」を伝えることで、地域への注意喚起に役立ちます。
保護活動「はしっこプロジェクト」と私たちができること
四国のクマは「守るべき希少動物」でもあります。「はしっこプロジェクト」では、カメラ調査や生息地となる広葉樹の森づくりを通じて、クマと人が共存できる未来を模索しています。
私たち旅行者にできる最大の貢献は、「エサになるものを絶対に森に残さないこと」です。ルールを守って自然を楽しむことが、結果的に四国の貴重なクマを守ることにつながります。
よくある質問
- 四国のどこに行けばクマに会わずに済みますか?
-
愛媛県や香川県の観光地(道後温泉、小豆島など)や、徳島・高知の市街地・沿岸部は、現状ほぼリスクがありません。剣山山系から離れたエリアを選べば安心です。
- 剣山へ登山に行きたいですが、1人でも大丈夫ですか?
-
人気の山ですが生息域の中心です。可能な限り複数人で行動することをおすすめします。単独の場合は、熊鈴やラジオを携帯し、早朝・夕方を避けて人が多い時間帯に登るようにしましょう。
- 車でスーパー林道を走るだけでも危険ですか?
-
車に乗って通過するだけであれば危険は低いです。ただし、写真撮影や休憩で車外に出る際は周囲を確認し、食べ物を外に放置しないよう注意してください。
まとめ:正しく恐れて、四国の自然を楽しもう
最後に、今回のポイントを整理します。
📌 記事の要点まとめ
- 四国のクマは「剣山山系周辺」に二十数頭ほど生息している。
- 愛媛・香川の一般観光地で過度な心配は不要。
- 2025年は「道路・集落」での目撃例もあり、エサ(ゴミ)管理がより重要に。
- 登山時は「熊鈴・複数人行動」、キャンプ時は「ゴミ持ち帰り」を徹底する。
「いる」ことを知っていれば、対策ができます。対策ができていれば、過剰に怖がる必要はありません。
四国の山々は、他にはない深い魅力を持っています。クマという隣人の存在を尊重しつつ、安全で思い出に残る旅を楽しんでください。
※本記事は2025年12月5日時点の公式発表・報道をもとに作成しています。最新の状況は、必ず自治体などの公式情報もあわせてご確認ください。


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